こんにちは、IverAviです。
ここ数週間でビットコイン価格は上昇気流に乗り上げ、その他アルトコイン含め、市場全体が大きく伸びていく前兆にあります。
中でも急激な伸びを見せたのは、時価総額ランク11位内に上り詰めた『SUI』です。
「SUI」は、次世代のWeb3業界を牽引するネットワークの階層(インフラレイヤー)の一つとして躍り出ています。
近年ソラナを後追いするように「Sei」「Aptos」「Monad」「Berachain」などといった、各ブロックチェーンのネットワークを最適化する例が多く見られる中、単に数値やスペックだけでは差別化しがたい状況での「SUI」はどんな特徴を持っているのでしょうか?
今回は今後注目されるSUIネットワークの強みや技術を深掘り、SUIが思い描く「Web3テクノロジーの普及(マスアダプション)への道」をわかりやすく順序立てて解説していきたいと思います。
どうぞよろしくお付き合いください。🙇
SUIとは?

「SUI」は2023年5月にリリースされたMysten Labs社開発の「ブロックチェーンネットワーク(レイヤー1)」です。
SUIの仮想通貨としての上限発行枚数は100億枚で、そのうち33%が市場に流通しています。
「SUI」の最高プロダクト責任者のAdeniyi Abiodum氏は、2024年の9月にX(旧Twitter)で投稿した記事において「お金の価値は信用で成り立っている」と強調され、ユーザーの信頼に応えきれていない既存のWeb3のプログラミング言語には限界があることを言及されていました。
ネットワークでは「トークン」という通貨が「価値」の代わりとして使われる中、それを含むシステムを構築するにあたって一番大事なのは「信用」であり、それを揺るがす「バグ」や「プログラムの改変」といった欠陥は致命的となってしまいます。
ブロックチェーンがグローバルな金融システムの柱となれば、「安全なコード」は必要不可欠なのですが、イーサリアムの「Solidity」などのスマートコントラクトのプログラミング言語だけでは厳しいものがあるようです。
そういった背景から「SUI」の創設者メンバーの多くが関わった「Meta社(旧Facebook)」の「Diem」プロジェクトで作られた「Move」という言語を元に、特定のネットワークのニーズに応えるよう改良された、「信用」や「開発者体験」の向上を目指す「Sui Move」を使っています。
特徴
「Sui Move」の特徴として、「オブジェクト指向」が挙げられます。
オブジェクト指向(オブジェクトベース)
オブジェクト指向とは、データや操作方法などがひとまとめに管理されたもの(オブジェクト)をベースに、大規模なプログラム開発を行うことです。
SUIのオブジェクトベースでは、一つのプログラムを「モノ」として考え、ブロックチェーン上の全てのデータに対して固有のデータを割り当てる方法をとっています。
これにより、代わりのきく価値あるトークンでも「NFT(非代替性トークン)」のように違いのわかる独自のデータとして扱われます。
オブジェクトを主体としたネットワークにより、各資産の「所有権」がはっきりすることで、多くのメリットを生み出すことができます。
このシステムはSUI特有のものであり、ユーザーを「ID」で識別してデータ管理する(アカウントベース;イーサリアム・ソラナ・Aptosなど)他のレイヤー1とは大いに違うところです。

従来のアカウントベースでは、データがアカウント(口座)の一部として扱われることで、管理が一元化されるため、取引などが行われるたびにアカウント全体を更新しなければいけません。
これは複数の取引履歴(トランザクション)が発生すると、データを一致させるために処理が一直線に並べられ、ネットワーク全体に負荷がかかって効率を悪くしてしまいます。
そしてアカウント全体を操作するため、特定のデータや資産に対する個別の操作が難しくなり、柔軟な処理が行き届かなくなります。
それに対してSUIでは各オブジェクトが独立して処理されるため、データの一致がとりやすく、データ処理がごちゃ混ぜになるリスクを減らし、より効率の良い「並列処理」が実現できます。
その他にも、開発者は特定のオブジェクトに対して直接手を加えられるため、様々なアプリやユースケース(ユーザーがシステムを利用すること)に対応することができます。
また、所有者以外はオブジェクトを操作できないため、セキュリティや資産の安全面においても大いに向上していきます。
「Narwal」と「Bullshark」
そんな並列処理を実現するSUIでは、「高い処理能力」と処理速度の遅れをなくす「低遅延」を実現するために「Narwhal」と「Bullshark」という取引の検証システムを採用しています。
これらは「取引履歴のデータ共有(Narwhal)」と「取引の順序決定(Bullshark)」を2段階に分けることで、データ処理の能力と効率を大幅に上げることを目的としています。
従来のPoS(Proof-Of-Stake)の取引検証システムでは、各取引の履歴を個別のバリデータ(検証用のPC)が確認した後、他のバリデータに共有され、取引履歴の一時待機場所に置かれます。
その後リーダーが待機場所から履歴を選別し、それを含むブロックが生成され、ネットワーク全体で「これで間違いない?」と確認をとります。

ただこれには課題があり、各履歴を個別にバリデータ間で1回目の共有をした後、再度ブロックを生成したバリデータのリーダーがブロック内の「取引リスト」をネットワーク全体に共有する必要があるため、データ量が重複し、待機幅の容量などが圧迫してしまいます。
Narwal(データ整理)
それを解決するべく、SUIでは各履歴を個別に共有するのではなく、複数の取引を一まとめにするのに「Narwal」が用いられます。
「Narwal」はデータを整理してバリデータ間で矛盾しない状態を保証するシステムです。
一つにまとめたものを「バッチ」と言い、それを暗号化して独自のIDを与えることで取引データがコンパクトに整理され、より効率的に管理できるようになります。
その後、それらのバッチは「DAG(有向非巡回グラフ)」というデータ構造に組み込まれます。

「DAG」は一方向にのみ進む道(線)で繋がった点の集まりで構成されており、この構造によってすべてのバリデータが同一のデータとして認識できる状態が作られ、依存関係を明確にすることができます。
データをまとめ、各バッチの把握を容易にするだけでなく、依存関係のないバッチを同時に処理(並列処理)するのを可能にし、ネットワーク全体の性能を向上させている点において大きなメリットがあります。
しかし、その時点で「Narwal」は取引のデータを“見やすいように整理しているだけ”で、その順序は臨時の処置にすぎません。
Bullshark(データの順序設定)

「Narwal」で取引履歴が整理された後、その情報を元に2つのラウンド(偶数と奇数)に分けることで、履歴の順序を決める役割を果たすのが「Bullshark」です。
「Bullshark」は取引の承認にいたるまでの順序を確定する検証システムです。
各偶数のラウンドでは「アンカー」と呼ばれるリーダーが、事前に決められたアルゴリズム(手順)によって選出され、取引履歴を含んだ新たなブロックを生成します。
そして、次の奇数ラウンドでバリデータがその提案に対して投票し、全体の3分の2の同意を得た場合に取引が確定します。
Mysticeti(V2)
SUIでは現在「Narwal」と「Bullshark」の後を引き継ぐ形で「Mysticeti」が取引検証の役割を担っています。
「Mysticeti」は処理速度の遅れを最小限に抑えつつ、処理能力を最大化することで、高速で並列処理可能な環境を提供するのを目指しています。
「Narwal」と「Bullshark」の設計を基盤として、0.1秒を390m秒(0.39秒)にとどめ、複数のバリデータが同時にブロックを提案することを可能にしています。
これによって一人のバリデータが1回に一つのブロックを提案する従来の方法とは異なり、ブロックが並列で提案処理されるため、ネットワークの効率がさらに向上します。
また「Mysticeti」はCPUやメモリといった計算装置を効率よく使用する設計になっており、ネットワークの負荷を軽減し、より安定した基盤を提供しています。
このように「Narwal」「Bullshark」「Mysticeti」の三つが、SUIに最先端の性能をもたらしていると言えます。
Pilotfish

SUIの強みである「Pilotfish」は、SUIのスマートコントラクトの実行エンジンとして、取引の処理能力を自動的に「横」に拡張(スケールアウト)できる技術です。
これは複数のマシーン(PC)が強調してタスクを分散して処理する「水平スケーリング(横に拡張)」という考え方で、高性能な一台のマシーンに頼るのではなく、複数のマシーンを連携させて処理能力を高める手法になっています。
「Pilotfish」の最大の特徴として、仕事量をマシーン数に比例して分散させ、処理能力を高められる点です。
それに対して、「垂直スケーリング(縦に拡張)」という手法では、CPUなどをアップグレードして1台あたりのスペックを強化しています。
しかし、物理的な制約やコストの観点から単一のマシーンの大幅な性能の向上には限界があります。
Pilotfishは「AWS(Amazon Web Services)」などの中央サーバーが採用している「自動スケーリング(PCの容量を調整するシステム)」のように、需要に応じてネットワークや計算装置を調整して動かしています。
PTB
「PTB(Programmable Transaction Block)」はプログラム可能な取引履歴のブロックであり、ブロックチェーンの複雑な取引を簡単に構築できる構造となっています。
これは複数の取引ステップを一つのまとまりとして処理することで、複雑な取引の効率を向上させています。

具体的には、一連の取引を「一つのまとまり(ユニット)」として実行し、それらの全てのステップが「成功して実行される」か「失敗して実行されない」かで、2択の結果しか出力しない「原子性(どちらかであるべき性質)」を持っているということになります。
途中でエラーが発生すれば、全ての処理が取り消され、中途半端な結果は残らず、データの矛盾や辻褄の合わない状態を防ぎます。
Web3の分野では、特に様々なユーザーが取り扱う「DeFi(分散型金融)」などにおいて、優位性を発揮する仕組みとなっています。
「Deepbook」と「Walrus」
「Deepbook」と「Walrus」は今注目されているプロトコル(通信規約)であり、SUIのエコシステムを担っています。
Deepbook

「Deepbook」は、SUI上に構築された「分散型CLOB(集中指値注文台帳)」という仮想通貨を運用する際に報酬を得るシステム(流動性レイヤー)となっています。
「CLOB」は既存の金融システムでも使われる仕組みで、取引の「買い注文」と「売り注文」を価格と時間の優先順位に基づいて板取引(売買する際の一覧表である「板」に基づいた取引)させています。
「DeFi」で主流な「流動性プール(暗号資産を運用する場所)」と「価格アルゴリズム(価格設定規約)」を成立させている「AMM(自動マーケットメイカー)」と比べて、より正確な価格設定が可能になっています。
これはAMMが一定価格ではなく、プール内で取引が行われるため、大きな注文をすればするほど、価格変動が発生しやすくなる仕組みとなっています。
特定の価格で大きな取引を行いたいときは、特に「CLOB」システムは大きなメリットになります。
また、「Deepbook」では、SUIの他のDeFiプロトコルと流動性(取引量)を集約・共有することで、市場を形づくり、取引価格のズレを最小限に抑えることができます。
そして進行プロジェクトは、初期段階から流動性を確保しやすくなるためエコシステム全体を促進します。
これが可能なのも、「高い処理能力」と「低遅延」があるSUIブロックチェーンが構築されているが故に、 今後SUIのエコシステムの発展とともに「流動性レイヤー」として、「Deepbook」が大きな役割を担うことは確実視されているようです。
ちなみに、ブロックチェーンのエコシステム内で利用される仮想通貨(ネイティブトークン)である「Deep」は、取引手数料の割引や流動性提供者へのインセンティブ(報酬)にもなっており、取引が増えるほど、バーン(焼却)され、トークンの希少価値が増す仕組みも採用しています。
SUI特有のデータ保存手段
ブロックチェーンは世界中の何百何千台ものPCで維持される「Googleスプレッドシート」のようなもので、これによりシステムの「透明性」を担保できています。
ただネットワークが成長し、保存するデータが増えるにつれて、膨大なデータ量を保存するのは長い目で見て困難になっていきます。
SUIは「取引手数料(ガス代)」と「ストレージ料金(データ保存料)」を分けることで、持続可能な「ストレージファンド」を導入しています。
ユーザーはデータ保存の料金を事前に支払い、これが一つのファンドに集約され、そこから時間をかけてバリデータに再分配されます。
また、ユーザーが事前に支払ったストレージ料金を使用していないデータを削除することで、部分的に返済される仕組みを採用しており、それが未使用のデータ削除のインセンティブとしてはたらき、ブロックチェーン全体の負担を軽くすることにも繋がります。
加えて、バリデータへストレージ料金が分配されるので、長期的にデータ保存していくインセンティブ(取り組み)にもなります。
しかし、それでもなお画像やデータなどの大量のデータを全てオンチェーン(ブロックチェーン上で行われることの全て)で保存するのは、長いスパンで考えれば難しくなっていきます。
そこで登場するのが「Walrus」です。
Walrus

「Walrus」はSUI上の「分散型ストレージ」であり、「大きなデータ」をより効率よく保存や管理するために開発されたものになります。
最も特徴的なのは、「Erasure Coding」というデータを「分割」して保存する技術がある点です。
今ではそれが改良され「Red Stuff」を用いることで、データを小さな破片(スライバー)に分割し、ストレージノード(保存用PC)に分散して保存するようになっています。
例えば、一つのデータファイルを9つの破片に分割して保存した場合、そのうち3分の2(最大で6つ)が失われても元のデータを復元できるというものです。
また「Walrus」はデータを「縦方向」と「横方向」で2次元に分割(分散)し、データ消失のリスクを軽減し、データの稼働率を上げています。
これは「完全複製」というもので、ノードがファイルの完全なコピーを保存する方法です。

また、「エンコード&シェア」といって一部のデータの破片が失われても復元が可能であり、効率の悪かった従来のSUI特有の保存方法に対して優位性があり注目を集めています。
Web3の様々な分野だけでなく、AI関連などのデータ容量の需要が増すのは確実な中、SUIの高度な並列処理を活用することで、「SUI」と「Walrus」ならではの新たなユースケースが生まれています。
将来性
その他にも、ユーザーの代わりに「ガス代」を支払ってくれる取引スポンサーやGoogle・facebookなどの既存のWeb2のログイン資格情報を活用してアプリへのログインを容易にする「zkLogin」といった機能も提供しています。

「zkLogin」は「ゼロ知識証明」という技術を使うことで、ログイン情報とブロックチェーン上のコードを切り離し、ユーザーのプライバシーを保証します。
今までであれば、「シーダフレーズ(ウォレットの復旧に必要な単語リスト)」というパスワードを管理する必要があったものの、初心者にとって参入のハードルを下げ、様々な方面からユーザー体験を向上させようとする試みが行われているのもあります。
また「Sui play」という携帯用ゲーム機の発売も上半期に控えており、再び新たな層をWeb3に引き入れる狙いもあるようです。
一見並列処理で実現される高いスケーラビリティ(拡張性)や安い取引手数料などの数値が注目されがちのようですが、SUIの原動力となっているのは、長年Web3の課題でもある「難しいから馴染みにくい」などといったイメージが定着していた開発体験(ユーザー体験)そのものを変えることにあるようです。
これまで言及してきた技術面(「Sui Move」「オブジェクト指向」)やプロトコル(「Deepbook」「Walrus」)もシンプルかつ直感的な体験にするためのもので、開発者体験(DevEX)の向上が全ての起点となっています。
そしてその最適化こそがより良いアプリやユーザー体験、最終的には「Web3におけるテクノロジー普及への道」へと通じる考えや思惑が背景にあるようです。
まとめ
以上が急成長中のレイヤー1ネットワーク「SUI」の解説でした。
以下まとめになります。
- 「SUI」とは、Meta社の元メンバーで立ち上げられた「レイヤー1ネットワーク(ブロックチェーン)」のこと。
- SUIは、Meta社のプロジェクトで使われていた「Move」言語を基盤とした「Sui Move」を使ってプログラムが組まれている。
- SUIは、「オブジェクト指向」という考えに基づいて、ブロックチェーン上の全ての取引データを固有のデータ(モノ)として割り当てている。
- SUIでは、プログラムの塊(オブジェクト)が独立して「並列処理」されているため、データがとりやすく、煩雑なデータ処理を軽減できる。
- SUIの取引検証システムとして、「Narwal」と「Bullshark」が使われている。
- Narwalは「データの整理担当」、Bullshrakは「データの順序設定」。その二つの後継が「Mysticeti」であり、より高速な並列処理ができるインフラが整っている。
- 「Pilotfish」は、SUIのスマートコントラクト機能であり、取引の処理能力を自動で「横に拡張」できる技術のこと。
- 「PTB」はSUIのブロックチェーン上の複雑な取引を簡単に処理させるブロックのこと。
- SUIのエコシステムの基盤として「Deepbook」と「Walrus」が使われている。
- 「Deepbook」はSUI上に構築される「分散型金融(流動性レイヤー)」であり、「Walrus」はSUI上で「データを分割して保存できるシステム(分散型ストレージ)」である。
- SUIは、多くのユーザーをWeb3業界へ引き入れる「機能」や「プロジェクト」が出揃っており、長期的な将来性が期待される。
SUIはつい最近リリースされたプロジェクトであったのもあり、自分もかなり理解するのに苦心しました。
解説不足の箇所もあるかと思われますが、できる限りわかりやすく噛み砕いてみました。
何はともあれ、「イーサリアムやソラナ、カルダノと肩を並べつつあるプロジェクト」と理解していれば十分だと思います。
今後もWeb3業界の急成長ぶりに注目です。
以上となります。
ここまでご一読くださりありがとうございました。🙇
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